ナチュラルとスタビライズド【用語集】

Natural and Stabilized Turquoise

「ナチュラルターコイズ」って?ターコイズは全部天然じゃないの?
「スタビライズドターコイズ」って?見分け方は?偽物のターコイズって?などなど。
インディアンジュエリー好きなら押さえておきたいターコイズのこと。

ナチュラルターコイズ Natural Turquoise

元々硬度があり、研磨だけで艶を出したターコイズ。石のそのままの美しさを楽しむことができます。
ターコイズは元々もろい性質のもの(チョークターコイズ)が多く、ナチュラルの状態でジュエリーにできるものはごく一部の良質なターコイズに限られます。ナチュラルの石は皮脂などの油分で変色が起きることがあり、キングマンやターコイズマウンテン等明るいブルーの石は、経年変化で独特の色合いになるものもあります。

※アメリカの法ではオイル処理やワックス処理されたものも、古くから伝統的に行われて来た手法だとして「ナチュラル」と呼ぶことができます。

◎ 天然の美しさを味わえる・鉱物として価値が高い
△ 皮脂などの油分で変色する・カケが起きやすく研磨・カットなどの加工が難しい

当店では、商品の鉱山名の前に「ナチュラル」または「N」と記載しています。

(例:「ナチュラルキングマン」「Nキングマン」


ナチュラルモレンシ

ナチュラルローンマウンテン

ナチュラルブルーウィドウ

スタビライズドターコイズ Stabilized Turquoise

Stabilizedとは安定させた、という意味。硬度が足りない石に、樹脂を浸み込ませて強度を上げたもの。
脆くても表情が美しいターコイズを加工により蘇らせたターコイズです。独特の透明感があり、経年変化での変色はしません。クラスターやインレイ、ヒシやビーズなど、カットして使用するターコイズにも多く用いられています。

◎ 変色しない・丈夫・発色が良い・安価・カット、研磨など加工がしやすい
△ ナチュラルとは言えない

当店では、商品の鉱山名の前に「スタビライズド」または「S」と記載しています。

(例:「スタビライズドキングマン」「Sキングマン」


スタビライズドキングマン

スタビライズドチャイニーズ

スタビライズドキングマン

ターコイズのスタビライズド加工の様子。(キングマン鉱山)


ナチュラルターコイズとスタビライズドターコイズの見分け方

現地のターコイズトレーダーやアーティストに訊くと、ターコイズは、カット(=石の切断・研磨)するとすぐわかる、と言います。カットすると、ナチュラルは土や泥の匂いですが、スタビライズのものはプラスチックの匂いがするそうです。


カットの途中のクラウドマウンテン(チャイニーズ)ターコイズ

ですが、ジュエリーになっているターコイズをカットする事は出来ませんよね。他に見分ける方法はないのでしょうか。

◇ マトリックスで見分ける

見た目で見分ける場合、マトリックス(=母岩)は判断しやすい部分となります。ウェブやマトリックスの部分に光沢が無くマットな質感のものは比較的簡単にスタビライズでないと判断できます。樹脂が浸み込んでいると艶が出るからです。


▼こちらはナチュラルターコイズ。

マトリックス部分に光沢が無いので見分けやすいですね


▼こちらはスタビライズド加工したもの。袋越しで分かりにくいですが、ウェブ・ターコイズ部分とも色が濃く均一になっています。


◇ 全体の色で見分ける

スタビライズド加工はターコイズに樹脂を浸み込ませる加工。元の石より色が濃くなるのは、黒板を水で濡らしたり、アスファルトに水をまいたりした時の色の変化と同じ仕組みです。浸み込ませるのは透明な樹脂でも、全体的に一段色が濃く、艶やかで均一な色味になるというわけです。


▼スタビライズドターコイズのラフ。プラスチックっぽさがあり、色が不自然に均一な気も。

「濡れたアスファルト」。そのイメージでスタビライズドの石を見ていると、少しずつナチュラルとの質感の違いが分かってきますよ。


ナチュラルの石をそのままカットするよりスタビライズ加工する方が労力がかかりますし、品質の悪いターコイズはスタビライズしても綺麗な石にはなりません。発色が良かったり、ウェブが美しかったりと、元々魅力がある石しかスタビライズドされないのです。スタビライズドされたターコイズには独特の透明感のある美しさがあり、そこが好き、という方も。


▼こちらは独特の透明感で人気の高い高品質スタビライズドキングマン。経年で色変わりしやすいキングマンですが、これなら変色する事はありません。


スタビライズをする装置を自分で持っている鉱山主はほんの少しで、小さい鉱山では別注をしてスタビライズ加工をしています。特に昔のターコイズはスタビライズする技術が広まっていなかったので、60年代、70年代にカットされたものはナチュラルターコイズである可能性が高いのだとか。採掘年代まで分かるターコイズは多くはありませんが、目安になりますね。

ちなみに・・・
「艶がある」「透明感がある」これらはスタビライズドターコイズの見分け方のめやすではあります。
ですが・・・
高品質ターコイズ。これは元々、透明な珪素(水晶などを構成する元素)がターコイズの微細な穴に浸み込んでいるもの。つまり「高品質なターコイズ」と「スタビライズドターコイズ」は特徴が似ていて、その見分け方は言葉で単純に言い表すのが難しいのです。

やはり最終的には「信用できるショップで購入する」「様々な品質・特徴のターコイズを見て目を肥やす」と言うのが、最も確実性の高い方法となります。


ネイティブアメリカンとスタビライズド

スタビライズド=偽物、という訳ではありません。スタビライズドはスタビライズドの良さがあり、存在理由があります。
伝統的な正装であるヒシネックレスやクラスタージュエリーを作る際、スタビライズドターコイズはじつは重要。「小さく削ってもOK」「スライスして穴をあけてもOK」な強度のナチュラルターコイズだけを使って製作すると、傑作にはなるものの、肝心のネイティブアメリカンの人々の手が届かない高額になってしまいます。

ヒシネックレス
クラスタージュエリー

ネイティブアメリカンにとってターコイズは本来近しい家族や友人に贈るもの。必ずしも最高級の石である必要はありません。儀式やパウワウのダンスの際などに欠けにくいスタビライズドターコイズはありがたい存在だったりするのです。


イミテーションターコイズ

Imitation=模倣・模造。残念なことに偽物ターコイズとして売られていることも。ターコイズイミテーションの歴史はとても古く、数千年さかのぼる古代エジプトやフェニキアでもターコイズに似せた陶器が作られています。
スタビライズドは加工ターコイズですが、ターコイズ以外で作るイミテーションも多くあります。天然石(ハウライトなど)をターコイズ色に染めたもの、ターコイズ色のプラスチック。「ターコイズの粉を固めたもので主成分はターコイズ」という「練りターコイズ」と呼ばれるものもありますが、成分は同じでも、自然に形成される石とは全くの別物と言えるでしょう。


▼こちらは「ターコイズ色に染色」したただのプラスチック。様々な技術を駆使してマトリックスやスパイダーウェブに似た模様を入れてあり、お土産物のインレイなどに使われています。遠目には分かりにくいですが、不自然なので結構すぐにわかります。

雰囲気は似せていますが、ナチュラルターコイズやスタビライズドターコイズとは、全く異なるものです。


ナチュラルターコイズは素晴らしい石

なぜスタビライズドやイミテーションが必要とされるのでしょうか。じつはターコイズの「硬度」に秘密があります。
ターコイズの硬度は「硬度2~7」とまちまち。チョークの様なもろいものから水晶と同程度の硬さまで、含有する鉱物によって変化します。そして実は、大部分のターコイズはもろいチョーク質。ナチュラルの状態で研磨するだけでジュエリーに使えるような上質ターコイズは、採掘量のほんのひと握りに過ぎません。

ターコイス原石

ターコイズは人気があり、全てナチュラルターコイズで制作すると価格が高くなってしまいます。そこで気軽にターコイズの雰囲気を楽しめるよう作られたのがスタビライズドやイミテーション。手軽なお土産物から次第にナチュラルターコイズ好きになったという方も多いのではないでしょうか。
「ナチュラルである」「ターコイズである」と偽るのでなければ、これはこれでユニークな素材なのです。

『空の欠片』
『水をとじこめた石』
『旅人の護り石』

ネイティブアメリカンの伝承で古くから大切にされてきた聖なる石・ターコイズ。自然の資源であるターコイズには限りがあり、近年ではますます採掘が難しくなっています。

「ナチュラルターコイズである」という、それ自体がすでに上質なターコイズである証。ナチュラルターコイズの中でさらに品質を分ける事はありますが、彫りだしたそのままを磨くだけで美しい石になる、というそのこと自体が、実は素晴らしいことなのです。

様々な色、様々な表情を持つターコイズの魅力をどうぞお楽しみください。

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